Advanced 3rd
一本のボルト

奥に行くと、魔獣の低い息遣いが響く部屋に辿り着いた。
この時クライヴは気付いた。 この遺跡が一体どうして赤いのか。
「なるほど………この遺跡はもともと赤かったワケではないのですね。」
クライヴは口元をハンカチで覆って言った。
「瑠璃を抱く怪龍……こいつの吐き出す毒素が、遺跡を酸化させ、赤く見せていたのですね。」
「御名答。 大した分析力だね。 さて、どうしようか。」
2人は、瑠璃を抱く怪龍を目の前にしてそう言った。
瑠璃を抱く怪龍は、黒いツヤ光りのする巨大なヘビの様な魔獣で、長い胴体の頭から数えて4分の1くらいのところに、
鋭く巨大な深紅の大鎌が(カマキリか?)せり出していた。
「思いの他デカいですね……弱点を一発で攻め落とそうにいも、僕のガングニールの弾丸なんて平気そうですね…」
「あんたでもムリそうかい?」
「いえ、なんとかしないと。
 こいつの首にかかった賞金が僕の報酬なんでしょう?
 だったら是が非でも倒さなければ、僕にとってはムダ骨も良いトコですよ。」
な〜んてクライヴが笑みを浮かべて見せた時。
カラッ…  ッガァン!
崩れかけていた遺跡の天井の一部が崩れ落ち、瑠璃を抱く怪龍の脳天を直撃!!
もちろん怪龍はうっすらと…赤く発光する目を開く。
「…………………………………………あ。」
ウィーダは真っ白、クライヴは小さく声を漏らす。 …………と、
あぎゃああああああああツ!!
逃ぃ〜げろぉぉーッ!!!
逃げてどうすんだい!!!
想わず逃げ出すクライヴの長い襟を引っ掴むウィーダ。
しかしクライヴは実際逃げもせず、メガネをくいっと上げてガングニールを構える。
「冗談はこの辺にしておいて……ヤツは目覚めました。 これで考えているヒマはなくなったワケですね。
 やれやれ………人生とはなかなかジックリと考える時間というものを与えてくれない様です……」
「呑気にポエムってる場合か!! 来るぞ!!」
ウィーダが声をあげた瞬間、2人の丁度中央に怪龍の大鎌がザクリと突き立つ!
もちろん2人は飛んで避けたが、怪龍は避けられた事に腹を立てたのか、怒りの雄たけびをあげるっ!!
「気をつけろ!! ヤツのあの雄たけびは……」
あんぎゃあああああああッ!!!!
ウィーダの声は、怒りの雄たけびによって掻き消される。
すると雄たけびに引き寄せられたのか、遺跡にいる魔獣達がワラワラと出て来た。
「なるほど……さすがに狂犬を自分一人で相手するほどアホではないという事ですね?」
「ザコの相手はあたしがする! あんたはヤツを!!」
言うなり、ウィーダはザコにARMを乱射し始めた。
「さてと…」
クライヴは、改めて瑠璃を抱く怪龍を睨み上げる。
「僕の相手はあなたの様です。
 僕を相手にどんな戦い方を見せてくれるんですか?」
怪龍を睨み上げるクライヴの目は、あの穏やかな目とはまるで正反対の鋭過ぎる、まさしくスナイパーの目。
並の魔獣でさえも簡単に威圧してしまう眼差しであったが、瑠璃を抱く怪龍にはまるで効果なし。
見えていないのか、それとも最初から相手にしないのか……何にせよ、クライヴを特別敵視している様子はなかった。
「……僕の事なんかまるで眼中にないって感じですか…………」
(さて……相手しろとは言われましたが、どうしたもんでしょうかねぇ………)
クライヴは、クチこそ冗談言ってはいたが、目だけは真剣に、怪龍の弱点を捜していた。
弱そうな個所なんて見当たらない。
しかしそれを見つけてこそクライヴってもんだ。(どんなもんだよ!)
「弱点がないなら………」
ジャキッ!
ガングニールを構え、クライヴは一発ダグァン!!と怪龍の胸元にブチ込んだ!!
怪龍はグャン!!という奇妙な声をあげて身を仰け反らせる。
「徐々に徐々に体力を削いで行くまでッ!!」
言い終えるのと同時にクライヴは走り出した。
走りながらも、落ちついて狙えるポイントを目で探す。
怪龍の攻撃パターンだって見ている。
(あそこだ!)
3秒後の自分を想定し、そこへ転がり込み、瞬時に位置修正をして怪龍の額に一撃与える。
ダグァン!!
そのままもう一発……と思ったが、無意識の内に体がそこから離れていた。
2秒後、クライヴがいた位置に怪龍の太いシッポが鞭の様にバシィと叩きつけられる。
「落ちついて狙い撃ちできないというワケですか。」
(そうなるとスタミナ勝負ですね……ヤツの体力が尽きるのが先か…………
 僕のスタミナが切れて動けなくなるのが先か…………!!)
クライヴは走り出した!
しかし、ここで彼の無意識の誤算が生じた。
怪龍は1匹、そしてその体も1つ。 だからこそ……アレも1つだと思っていた。
そう、それが自然の常識ってもんなのだ。
しかしこいつは魔獣!
「!!!!」
しっぽの一撃をかわした時、クライヴは目の前が紫色のフラッシュした気がした。
怪龍の2本目のしっぽが、彼の胴体を強く引っ叩いたのだ。
しかもその大きさは決して細く小さいものではないゆえ、クライヴは内臓の芯にまでダメージを受けた。
「っげほぁッ………!!」
クライヴは一瞬意識を暗転させたが、それはあくまで一瞬だけ。
すぐに目を見開き、意識を保たせ……はしたが、グッとうずくまり、その場に倒れてしまう。
「けほッ……げほッげほッ!!」
クライヴはしばらく動けそうになかった。
「はッ…ハァ、ハァ……マズイッ…………!」
腕をついて動こうとするのだが、呼吸の溜めが必要なため、息が詰まり、その苦しさに耐え切れず、またうずくまってしまう。
怪龍はらぁぁ〜っき〜♪とばかりに大鎌を振りかざして来る。
「…………グッ…!!」
クライヴはなんとか立ち上がろうとするがムダな徒労に終わってしまう。
怪龍が大鎌を振りかざして突っ込んで来た!!
(THE END…………!!?)
クライヴが目をギュッとつむった時、疾風が彼を取り巻いた。
疾風は彼を抱き上げ、その場から一瞬で離脱し、怪龍の大鎌はまたも地面にドガァと突き刺さる。
「ウィ、ウィーダ!?」
クライヴがようやく声をあげた。
そう、彼を助け出したのは、足のリミッターを外してギアなんかを剥き出しにしたウィーダだった。
「大丈夫か!? できればこいつを倒してもらいたかったんだが……ムリそうなら退くよ?」
「退くよ?」と言われて「はい退きます!」と言えないのがクライヴで。
「冗談じゃありませんよ。 こんな中途半端なまま引き下がって堪るものですか。
 やられっぱなしで帰るなんて、僕らしくありませんよ。」
「だが現実にやられてるじゃないか。 それとも何か勝機でも?」
ウィーダが問うと、クライヴはハゥ…と溜息をついて前髪をちょっと横へ避け(すぐ戻って来たけど)、
「まぁ………ないワケでもありませんが。」
と思わせぶりなセリフを吐いた。
「大丈夫……一応一発逆転のワザくらいは持ち合わせています。
 ウィーダ、あなたはひとまず目的の品とやらを捜して来なさい。
 その間に、こいつは僕がなんとかしておきますよ。」
「け、けど、大丈夫なのかい?」
「ホラ。」
クライヴはウィーダからストンッと飛び降り、彼女の体を押した。
すると怪龍がウガァ!と彼女とクライヴとの丁度間をすり抜ける。
「ッ………!!」
髪の毛を数本切られたウィーダは、まさに間一髪というものを感じていた。
「………信じても平気なんだね!?」
ウィーダに背を向けるクライヴに向かって叫ぶと、クライヴはウィーダに背を向けたままガングニールを高く掲げた。
そのポーズを見て、ウィーダは意を決して走り出した。
彼女の足音を背に、クライヴは「さて」と言ってガングニールの安全装置を入れた。
「ホントはこういうのってあんまり得意じゃないんですけどねぇ。」
言うなり、クライヴはATACKで怪龍を相手し始めた。
もちろん、そんな痛くも痒くもなさそうな一撃など、怪龍には全然効いてなかった。
クライヴだってそんな事は百も承知だ。
では彼が狙っているのは一体……………?
怪龍の体の至る所にATACKをしかけるクライヴ。 しかしダメージは一向に与えられない。
怪龍だって、さっきの攻撃は何だったんだとばかりに首をかしげ出している。
それでもクライヴの眼差しは、決してその攻撃がヤケッパチの攻撃ではないと語っていた。
《もう飽きた!!》と言わんばかりに、怪龍がしっぽでクライヴを叩き落とした。
「…99………」
その時、クライヴからもれた言葉がコレ。
とどめだと言わんばかりに、怪龍が大鎌を光らせる。
赤く輝く大鎌から、赤い閃光を放つ鎌鼬が放たれるッ!!!
ズヴァジュンッ!!!(ネガティブレインボウの音。)
三日月型の鎌鼬は、クライヴの胴体中央にまともに入る!
「クライヴッ!!!」
その時、丁度目当てのものを取って来たウィーダが戻って来た。
クライヴは鎌鼬の勢いに乗せられたままぶっ飛び、その場に仰向けになって、大の字になって倒れる。
「……そんな…………!」
ウィーダがわずかにかすれた声をもらした。
怪龍は勝ち誇った笑み(?)を浮かべてウィーダに鎌首を向けた。
次はお前だ、とでも言わんばかりに。
ズルズルと怪龍がウィーダに歩み(?)を進めていく………!
と、その時!
っぴょいっ
「100!」
クライヴが飛び起き、めちゃめちゃおちゃめな声を発した。
「ックッ、クライヴッ!!?」
もちろんウィーダはビックリして声をあげる。(怪龍も目を丸くしている)
「何驚いてるんですかぁ。 これでも結構頑丈には出来てる方なんですよぉ?」
声はいつもののほほん声。
しかしその身からは、溢れんばかりのフォースを感じた。
「この時を待っていたんです。 僕のフォースが100になるこの時をね!!」
言うなり、彼はガッと瞳を見開き、
「おおおおおおおおッ!!!」
怪龍目指して一気にダッシュした! その素早い事!!
(速いッ……!!)
そしてクライヴは、ATACKの一撃を繰り出すッ!!
!!!!
さきほどのATACKの攻撃力とはワケが違う。
しかも一発一発の攻撃ではなく、猛ラッシュ!!
猛攻撃の猛ラッシュ! これには怪龍だって一堪まりもない。
ましてやクライヴも、フイネストアーツだけで倒すつもりでいため、
一撃一撃が渾身の一撃とも言えるほど、とてつもなく重かった。
ずぎゃあッ!!!
ファイネストアーツ最後の一撃が怪龍の胸元に叩き込まれる。
あぎゃああああああああああああああああああああ……
怪龍の最期の雄たけびが、虚しく…遺跡『グランダーテジャス』に響き渡り、瑠璃を抱く怪龍はチリと化して消え去った。
ファイネストアーツ。
………文字通りの一発逆転の必殺技だ。
しかし最後の一発逆転の必殺技なだけあって、体にかかる負担も大きい。
クライヴは怪龍が消えて落下していく勢いに任せて床にドサリと倒れ、忙しなく肩で息をする。
「大丈夫か!?」
ウィーダが駆け寄ると、彼はムクリとなんとか体を起こし、ペタンとその場であぐらをかいた。
「ハァ、ハァ、ハァ……まぁ……なんとかね…………
 ……それで……? あったんですか? その目的の品というものが。」
クライヴが言うと、ウィーダはずっと握り締めていた右手をクライヴの目の前で広げて見せた。
その中央には、少し太い圧力管のボルトの様なものがチョコンと乗っかっていた。
「…………ボルト………ですか? これは。」
「あたしのこの体を改造してくれた人がいるっつったろ? その人も、やっぱりあたしと同じで、全身義体でさ。
 ……………あの人……ここで、アイツに殺されたんだ。 全身をバラバラに……されてさ。」
彼女の悲しげな言葉に、クライヴはハッと全ての謎が一気に解けた気がした。
「もしかして、あなたがここを知っている様な口ぶりをしていたのも………」
「そうさ。 あたしは、1度ここにその人と潜入調査したことがあるんだ。
 その最中に、ヤツに襲われ、奇跡的にあたしだけが助かって…………
 やられっぱなしってのも悔しかったし、あの人の遺品を何一つ持って帰れなかったから、悔しくて………
 だからこうして……取りに来た…………。」
「………なんで最初から言ってくれなかったんですか。」
クライヴが責める様な口調で言った
「仇を討ちたいのならそう言ってくれれば良かったでしょう! どうしてあんな回りくどい言い方で依頼したんです!!?」
「言えるワケねぇじゃねぇか!!」
ウィーダが叫んだ。
苦しい胸の内を吐き出すかのごとく。
「…言えるワケ……ねぇじゃねぇか…………
 本来なら自分が取らなきゃいけない仇を……赤の他人に頼むなんてよ………!!
 自分の私怨を他人に押し付ける様なセリフ、言えるワケねぇだろ!!!」
ウィーダの言葉に、クライヴは胸の奥が痛んだ。
「……すみません。」
クライヴが謝ると、ウィーダはフッといつもの頬笑みを浮かべて言った。
「いいさ。 こうして形見も取ってこれたんだし。
 さ、もうこんなトコに用はない。 さっさと出ようぜ。」
「………それもそうですね。」
クライヴは、どこか物悲しい顔をしてうなずいた。

「ウィーダは強いですね。」
遺跡から出て、ハシュラスに乗ってデューンキャニオン駅へ向かう途中、クライヴがウィーダに言った。
「なんで? あたしは強くないよ。 あんたに頼らなくちゃ…瑠璃を抱く怪龍を倒せなかった。」
「ココロの強さを言ってるんですよ。」
クライヴは優しい口調で言った。
「自分が大切に思っている人終焉の地へ舞い戻って形見を捜すだなんて………
 僕には到底できない…………」
(そうさ……僕だって……先生の亡骸に会いに行こうともしていない……
 ……恐くて…先生に会わす顔がなくて……ずっと行けぬまま…あの場所だってもう記憶にはない…………)
「泣いてるのか?」
不意にウィーダが言って来た。
「え?」と聞き返す時、クライヴも気付いた。
自分の目元が濡れていることに。
過去の後悔。
妻に「あまりココロに重荷をかけるな」と言われて気にすまい気にすまいとしていたのだが、やはり忘れられない。
それが『後悔』というものなのだ。
「……あッ………あははは………………そうですね。
 あなたと、あなたの想う人との再会に、もらい泣きしてしまった様です……」
「あたしは泣いてないよ?」
「え……あッ…………あはは……………はははは……………」
クライヴはボロボロだった。
肉体的にも。
……………精神的にも。
「………すみません、ウィーダ……ちょっとだけ………ちょっとだけで構いませんから……
 背中を貸してくれませんか…………?」
クライヴの言葉に、全てを読み取ったウィーダはフッと笑った。

「いいけど、見ての通り薄着だからね、あんまり濡らさないでくれよ? 錆びるから。」

「……お手数……掛けます………」


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名前はキリマなんだけど、キリマンジャロコーヒーってマズッ!!
(↑呑んでるのはモカだろうが!!)
後半はコーヒー呑みながらの執筆です。
だもんで感覚おかしくなってます。(あ〜マズッ!)

なぁんか終わり方が中途半端でいかんね。(笑)
でも、あんまり長くすると色々とつまらんシーン増えるだろうし。と思ってキリました。ハイ。
とりあえず、この数ヶ月後に彼はパラックライズで瘴気の洞窟だっけ?そこへ向かい、
そしてヴァージニア達ととんでもない出会い方をするんです。と。
あぁ、言えたよ。 言えた言えた。 うん言えた。
え? だったらそこまで語り入れろって?
いーじゃん。ああいう終わり方で。(にゃっはっはっは)

さて、クイズの答えです。
正解は………ウィダインゼリー
まっさかウィーダの名前をウィダインゼリーから取ったなどとは…誰も思わんでしょう。

2ndのカノンさんみたいなウィーダさん。
でも違うのはカノンさんと違って、ウィーダは銃タイプだという事。
その気になればミサイルとかナパーム弾とかロケット弾とか出せます。
でも、何分遺跡の中なんで、あんまりデカイモン使ったら、遺跡ごとぐじゃあ。
な〜んて事にもなりかねないので、今回はダメ〜。(笑)

それにしてもクライヴさん。 瑠璃を抱く怪龍さんチリになっちゃったよ?
どうやって賞金もらいにいくつもりだい?(笑)
クライヴ「それは言わないで下さい!」