荒廃しゆく 死に逝く荒野の星 ファルガイア

僕と先生は その荒廃原因を割り出し

そこから再生方法を見出すために調査をしていた

だから僕は………… どうしても【想い出】を見つけたかったんだ……




】という名の傍観人




「なんだ!!? どこなんだよココ!!」
ギャロウズの声に、クライヴはハッと目を覚ました。
目の前は薄く、どこかグレーに近い空色の世界。
ガバリと飛び起きて辺りを見まわしても、全く同じ色がただただ広がる何もない空間。
唯一あるモノと言えば、ギャロウズやヴァージニアやジェットといった、いつも見る顔ぶれの人間達ぐらいのものだろう。
そう、それ以外のものは何もないのだ。
「俺達……………。 何をした?」
ジェットも目を丸くして辺りを見まわしながら言う。
「何って、いつもと変わらぬ事をしてたわよ……。
 コカトリスが落とした宝箱を開けただけ…それ以外に何も、特に変わった事はしてないはずよ。」
ヴァージニアも今置かれている状況が信じられないらしく、手持ちぶたさなのか、両手の平を上に向けてオロオロしている。
クライヴはようやく腰を上げ、スクリと立ち上がった。
その際、いつの間にか解けてしまったらしく、髪の毛がサラリと顔にかかった。
(アレ…髪紐が…)
彼が髪の毛に手を当てていると、ヴァージニアがこちらに気付いて「クライヴ!」と叫んだ。
するとギャロウズとジェットの視線も、自然とクライヴに集まる。
「大丈夫? あなたが一番ヤバかったのよ?」
「ヤバかった?」
クライヴはキョトンとした様子で、目の前にやって来て自分の顔を見上げるヴァージニアに聞き返す。
すると後ろからギャロウズも歩いて来て、ばしばしとクライヴの背中を叩く。
「そうだぜぇ?
 顔色も真っ青だったし、息もしてねぇし心臓まで止まってってそれじゃ死んどるやん!
「下らん漫才は一人でやってろ。 誰もつっこまねぇから。」
ジェットが冷たく言うと、ギャロウズは片隅でしゃがみ込んでイジイジイジイジと地面にのの字を描く。
「下らんダメ大人は放っておくとして……お前は本当にヤバかった。
 確かに顔色も青かったし、息もしてなかった。 心臓は止まってなかったが、マジでヤバかった。」
「結局そうなりますか。」
クライヴが冷静にそう言った時。
地面にのの字を書いていたギャロウズがピクリと何かに反応を示す。
「…おい、何か………」
ギャロウズが立ち上がると、彼はその瞬間硬直した。
その眼差しが、いつものおちゃらけを全く見せていなかったため、余程の事だなと理解したクライヴ達は彼の視線の先を振り向いた。
そして、彼らも硬直した。
今彼らが足をつけている地面よりは明らかに高い位置を浮遊している人間、そしての姿を見て。
「……クライヴ…?」
ヴァージニアは思わずそうつぶやいた。
宙に浮かんだ人間の姿を描写すると、白シャツに白い柔かな布ズボンに身を包んだ、頭のてっぺんに狼の様な小さい耳をたてた銀髪のクライヴ。
ただ、その髪の毛はボサボサに伸ばされており、クライヴ=ウィンスレットの様に荒野の風に吹かれても尚ぴしっとしている髪型とは正反対である。
見るからに変な男なのだが、その体から発せられる波動はガーディアンのそれと似ていた。
「あいつ………まさかガーディアン!?」
ジェットが言うと、ギャロウズは「いや」と急にマジメな顔になって否定する。
「俺達は、バスカーに伝わるガーディアンとは全部会って来たはずだ。
 ……あの十二のガーディアン以外にガーディアンなんて、いるワケがねぇんだッ!!」
「ですが………この波動は間違いなくガーディアン…ッ…………!?」
言っていてクライヴはグラリと意識を一瞬だけ暗転させ、フラリとよろめいて、後ろにいるギャロウズの方へ倒れ込み、その太い腕に支えられる。
「お、おい!?」
「クライヴ!?」
ギャロウズとヴァージニアが騒ぐと、銀髪の男がすぅっと前に進んでヴァージニア達の目の前まで寄って来る。
見れば見るほど端正な顔立ちで……ただクライヴと違うのは、その冷たい眼差し。
まるで世のケガレ全てを見て来た様な、疲れきった目でもあった。
『大丈夫だ。彼のイメージを私がインストールしているがゆえに、彼が消耗しているだけだ。』
男の言葉に、ヴァージニアは「なんですって!?」と顔色を変えた。
細かいことは理解できなくとも、この男の所為でクライヴがどうにかなっているという事は理解できたらしい。
「クライヴに何をしたの!? 何の目的があってクライヴを……!?」
『問いたいのは私のほうだ。』
男は静かに、感情に波一つ立てぬ様子で言った。
『お前達は、通常では考えられない場所に立っているのだ。 わかるか?』
「…?」
男の言葉に、一行はそろって首をかしげる。
男はさらにこう続けた。
『ここは言わば宇宙の最果て。 私はそこにたゆたう者。』

全然わからんよっ!!!
一行の顔がそう言っていた。
その顔に気付いたか、男はフムと溜息を小さくつく。
「……先ほど……僕のイメージをインストールしているとか言いましたね…」
ギャロウズに支えてもらいながらクライヴが言った。
「イメージをインストール……つまり取り込んでいるという事は……
 あなたは実態を持っていない存在だという事なのですか?」
クライヴはなんとか立ち上がって、ようやっとの事で言葉をつむぎ出す。
「僕のイメージがなければ体を保てない、そういう……種族なのですか?」
『実体はない。 だが、体ならある。』
男は言った。
『私の体は、お前達を包み込むモノ。 すなわち【空】そのもの。
 我が名は【空】を司りし者。 天空に住まわる【始まり】から【終わり】までを見届ける【傍観者】だ。』
「……ソ………ラ……?」
「って、青いお空のことか?」
ギャロウズが上を指差して言うと、【空】を司りし者はコクリとうなずいた。
『誰の上にも平等に広がる、変わる事なき永遠なる蒼。 それが、私だ。
 私にはカタチある姿がない。 故に……。 お前のイメージマトリクスをインストールし、
 ここにこうしてダウンロードし、お前達と話せる様にしているのだ。』
「それでクライヴの姿をしてる………ってワケか。」
「それで? お空を司るヒトが、俺達に何の用なんだぃ?」
ギャロウズがさお面倒臭がる様な仕草をして言うと、【空】を司りし者はフッと右手の平を真上に舞わせた。
『私がお前達に用があるワケではない。 お前達が私の世界に飛び込んで来たのだ。』
「あ?」
『私の世界は星の空気とは違う空間…………全ての星と星とを繋ぐ亜空間…………。
 お前達からしてみれば、言わば異界なのだ。』
「答えになってねぇよ!」
ギャロウズが声を荒くすると、【空】を司りし者はフッと顔をうつむけた。
『普通ならば、お前達がこの世界に干渉する事など有り得ないのだ。
 なのにお前達はここにいる。 ……なぜだ? なぜお前達はここにいるのだ?』
「俺達は宝箱を開けただけだぜ。
 ……そしたらいきなり目の前の風景が変わって………。
 なぜここにいるのだと聞いたな。 それはこっちが聞きたいくらいだぜッ!!!」
ジェットも声を荒立てる。
「……私達を、元いた場所に戻す事はできないの?」
ヴァージニアが、1人落ちついた声で問うと、【空】を司りし者はコクリとうなずいた。
『それならば容易い。 この空間は私の意志と直接リンクしているからな。
 私の意志1つで、お前達を元いた世界に戻してやれるだろう。』
「…良かった。
 ………じゃあ、今すぐ戻し」
「待って下さい。」
ヴァージニアの言葉を遮るかのごとく、クライヴが身を乗り出して言った。
「【始まり】から【終わり】までを見届ける【傍観者】……………そう言いましたね。
 【始まり】から見届けているのなら、知っているのではないんですか? 僕達の住むファルガイアの歴史を。」
息を喘がせながら言うクライヴの言葉に、3人はハッとした。
クライヴが言いたい事に気付いたのだ。
【空】を司りし者は静かにうなずく。
『いかにも………………ファルガイアは崩壊へと歩みを進めている老いた星………。
 その消え行く命の灯火は、いつ消えてしまうか、いつ消えてしまうかと……目が離せん。』
「ならば教えて下さい!! あなたも見たはずです!!
 僕達ファルガイアの民は……10年よりも昔のファルイガイアの記憶を奪い取られてしまっている!!!
 今よりも、少しは緑のあった美しいファルガイアを………僕は思い出したい………!!
 お願いします!! あなたの知っている、10年前のファルガイアの姿を、教えて下さい!!!」
クライヴは、切実なる……かつ悲痛な声で叫び上げた。
その言葉に、誰も異論を唱える者は………止める者はいなかった。
皆知っているのだ。 彼の想いを。
しかし、【空】を司りし者の返答は彼にとっては冷たいものだった。
『言ったはず…………私は【始まり】から【終わり】までを見届ける【傍観者】………
 全ての世界を見届け、渡り歩ける権限を得た代わりに……カタチある者との干渉は禁忌とされているのだ。』
「元は残っていた記憶を語る事は干渉と言えないはずです!!
 だって、僕達には、少なからずとも10年前までは緑あるファルガイアの記憶があったはずなんですから!!
 知らない知識を与えるワケじゃない……取り戻すべき記憶を思い出させるだけでしょう!!?」
それでも【空】を司りし者は首を横に振った。
『取り戻すべき記憶も…………所詮は【失われたモノ】に過ぎない……。
 失われたモノは自分で取り戻す………誰の力も借りずに…。
 そうしなければ、全ての生きとし生ける者達は前に進めないのだ………。』
「だけどッ!!!」
クライヴが叫んだ時、【空】を司りし者はそれまでうっすらと開けていた目をカッと見開いた。
同時に一行の体には強い衝撃が走り、ヴァージニアはペタンとその場に座り込んでしまう。
クライヴは、ガクリとひざを折り、その場にうずくまる。
「ク、クライヴッ!」
ギャロウズが駆け寄ると、クライヴは息をゼェゼェ言わせながらも立ち上がり、尚も【空】を司りし者を見つめた。
『頼れる者は頼れ……か? だが、永遠にそれを続けていては何の流れも変えられない。
 考えるのだ、人間よ。 頼ってばかりでは、いずれ道が途切れる。
 自分で道を切り開くのだ。』
【空】を司りし者はクライヴを見据えて言った。
『振り回されて、揺れて、揺れ動いてばかりでは、きっとどんな結末になったとしてもお前は後悔する。
 自分で切り開いた道を進めば、きっと後悔しない。
 自分で出した答えならば、きっと迷わない。
 だから自分で捜すのだ。 お前が納得できる答えを。』
言って【空】を司りし者はクライヴに手を差し伸べた。
『他人の知識よりも、お前自身が調べ、その目で確かめて出した答えならば、
 揺れる事なく、それはしっかりと根付き、真相に近付く。
 ………それではダメなのか?
 人間とは、そうやって道を作って生きていく生き物ではないのか?』
クライヴは答える事ができなかった。
『……………私は何も見なかった。 そして何も聞かなかった。 何も言わなかった…………。 良いな。』
【空】を司りし者が言った時、クライヴの足元が、まるで水面に水滴をたらしたかのごとく波紋を広げ、波立った。
同時に、波立った地面が真っ白に輝き出し、一行の衣服をバサバサ舞い上げるほどの突風を起こす。
「おわぁぁなんだぁ!!?」
「ス、スカートがぁ!」
「………。」(ジェット無言)
一行が光に包まれる様を、【空】を司りし者は静かな眼差しで見つめていた。
クライヴは、【空】を司りし者を見つめたまま黙り込んでいた。
やがて光はより一層強くなり、一行の誰もが真っ白な世界に放り出されてしまう………

「おい………おい、クライヴッ!」
「クーラーイーヴーッ!」
「………………………………………………ん?」
ギャロウズとヴァージニアのけたたましい声に起こされ、クライヴは目を覚ました。
目を開けると、正面には雲がキレイに流れていく青い空が広がっていた。
そしてそのそばに見えるは、切り立ち乾ききった赤茶けた岩場。
「あ………」
クライヴは小さく声をあげて起き上がった。
「……戻って来れたみたいですね。」
クライヴが小さくつぶやくと、ギャロウズは「おう」と答えた。
その反応を見て、クライヴは自分が見たアレは夢物語ではないのだなという事を知る。
「しっかし結局のところ何だったんだろうなぁアレはッ!」
ガリガリと頭を掻きながらギャロウズがグチっぽく言った。
「散ッ々ワッケわかんねぇ事ヌカして、バーッと光って、そしたら元の場所に戻ってるんだから。
 全く、お空の考えるこたぁ良くわからんよ。」
「……………僕が呼び寄せたのかもしれません。」
クライヴはふとそうつぶやいた。
「あぁ?」
「僕が………あまりにファルガイアの【想い出】に執着していたから………だからきっと、
 【空】を司る者は、僕にあの一言を言うために、僕達をあの場所へ飛ばしたのではないでしょうか。」
クライヴが言うと、ギャロウズはまともに目を丸くさせ、
「……お前いつからポエットになったんだ?」
と、マジメに問い返してしまう。
それほどまでに、彼の物言いは思い込みが激しい様に思われたのだ。
クライヴは頭をカキカキ、少し顔を紅くして
「…ダメですかねぇ。」
と、リーダーことヴァージニアの顔を見た。
「………きっとそうよ。」
思いの他、ヴァージニアは肯定してくれた。(てっきりギャロウズ共々変な顔をすると思ったらしい)
「きっと、クライヴがあまりにも思い詰めちゃってるから、
 【空】さん、あなたの事、助けようとしたんじゃないかな。」
「助ける?」
クライヴが問うと、ヴァージニアは「えぇ」とうなずいて見せた。
「自分で何とかできないのだから、クライヴに【1人でもなんとかできる元気】をくれたのよ。
 それくらいなら、【干渉】とは言わないと思って。
 これが間違いであっても、そうであって欲しいとは思わない?」
ヴァージニアの、どこか子供っぽい笑みに、クライヴは思わずクスリと笑みを溢してしまった。
「そう…………ですね。」
クライヴのその返事を確認すると、ヴァージニアは「さてっと!」と言って立ち上がった。
「それじゃ、そろそろ行きましょうか?」
「確か、次はミーミルへ向かうんでしたね。」
「そうよ! …でも未だ手掛かりらしいモノなど何もなくー………。
 ………だからこそ行くのよッ!! 私達はッ!!!」
ヴァージニアは言って、ギャロウズとジェットの背中を叩いて歩き出した。
クライヴも立ち上がり、歩き出そうとしてふと足を止め、真上に広がる青空を見上げた。
(僕が道を切り開いていけるかどうか………ソコでじっくり見ていて下さい。
 きっと流れを変えてみせます。 砂漠に飲み込まれていくファルガイアの命の流れをッ…!)
心でそっとそう誓い、彼は荒野の大地に一歩を踏み出すのであった。





寝ぼけ眼で描くと物凄いデキになります。(汗)
正直、自分でも良いデキなんだか悪いデキなんだか判別ついておりません。
そんなもの贈るなって気もしますが、ギリギリで思いついたので「じゃあせめて!」
………物事は思いつきでやるのはやめましょうって暗示かもしれませんね。

モンスターが落としていく宝箱って色々なモノが詰まってますよね。トラップも含め。
そのトラップの中に、ワープゾーンみたいのがあったら?(笑)
そんな想像(妄想?)が過ぎったのをキッカケに書きました。

クライヴさんと【空】との対決!みたいのを思い描いてたのですが、
(圧倒的な力の差を前にしても立ち向かおうとするクライヴさん!みたいなのとか。)
どうも時間ないみたいなのでカット。
機会があれば、リメイク版でも書こうかなとか思いはしてますが、
そうなるとしんどそうだなーとか…(面倒臭がりめ)



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